A-stories 8がけ社会 消滅の先へ(インタビュー)
日本の人口は減少を続け、現役世代が2割減る「8がけ社会」へと向かいます。その影響は真っ先に地方に及びます。劇作家の平田オリザさん(62)は芸術文化観光専門職大学の開学に関わったことを機に、2019年から活動の拠点を東京から大学のある兵庫県豊岡市に移しました。「アートと大学で、人口減に歯止めをかける」と話す平田さんに聞きました。地方は輝きを取りもどせますか――。
――豊岡との関わりはいつからですか。
10年以上前に市内の観光地・城崎温泉にある城崎国際アートセンターの前身・城崎大会議館について、相談を受けたのがきっかけです。県から市に譲渡された宿泊型会議・研修施設をどう活用するか。リニューアルを検討する委員会のアドバイザーになりました。
城崎温泉は、志賀直哉の「城の崎にて」で有名ですが、志賀だけではなく、有島武郎など文人墨客を受け入れてきた歴史があることを知りました。芸術家たちが滞在する、今で言う「アーティスト・イン・レジデンス」だったのではないかと思ったんです。
ここに芸術家が再び集い、21世紀の「城の崎にて」ができれば、また100年通用するシンボルになる。今度は小説ではなくて、ビデオアートかもしれないし、コンテンポラリーダンスかもしれない。世界を見据える新しい「城の崎にて」のストーリーが自分の中にできた時に「いける」と思いました。
連載「8がけ社会 消滅の先へ」
地方の「消滅」危機が唱えられて10年以上が経ちました。日本の人口はさらに縮小し、並行して現役世代が2割減る「8がけ社会」へと向かいます。すべての自治体が今のまま続くとは考えにくい。だからこそ「消滅の先」を描こうとする各地の取り組みから、地方の未来を考えます。
14年にセンターが開所した後は、21年まで芸術監督に。同時期に市の参与も務め、文化政策全般に関わりました。
――劇団の公演や演劇のワークショップなどで各地の自治体と交流があったなか、移住を決めたのはどうしてですか。
市内で芸術文化と観光を専門…