韓国で、政府が打ち出した医学部の定員増に対して現役の医師たちが反対し、混乱が続いています。2025年入学から定員(現行3058人)を2千人増やす計画をめぐる対立の背景には、何があるのか。ニッセイ基礎研究所上席研究員の金明中(キムミョンジュン)氏に聞きました。
- 韓国政府と医師協会、深まる対立 医学部定員増、政権の支持率上昇に
――社会にどのような影響が出ていますか。
政府が2月に計画を発表してから、研修医が大勢辞表を提出し、その後、研修医を支持する教授たちも続きました。一部は実際に職場を離れ、まだ戻っていません。その結果、きちんと診療が受けられない人が増え、救急搬送されても手術が受けられずに患者が死亡した事例も報じられました。
――何が対立点なのでしょうか。
韓国の医師数は、1千人あたり約2.6人と、経済協力開発機構(OECD)加盟国のなかでは日本とともに下位にいます。政府は、これからの高齢化を踏まえてもっと医師が必要だと考えています。今回の定員増計画は、政府系シンクタンクやソウル大の研究チームの報告、地方大学からの聞き取りなどを参考にしています。
医学部は一般大学に比べると教授の数が多いので、十分に活用すれば、学生が増えても指導に大きな支障はない、と政府は考えています。
これに対して医療界は、将来…