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希望のまちへ

 赤や黄、緑に青。カラフルで大きな壁は、通りからでも目をひく。北九州市小倉北区の空き地に建つプレハブ小屋の壁の絵は、市在住の画家、黒田征太郎さんが地域の子どもたちと一緒に描きあげたものだ。

 空き地には2019年まで、特定危険指定暴力団工藤会の本部事務所があった。その場所で今、「希望のまち」というプロジェクトが進む。「SUBACO(スバコ)」と名付けられたプレハブでは、定期的にマルシェなどの地域交流イベントが開かれ、まちづくりが始まっている。

 ジャーナリストの国谷裕子さんが今夏、現地を訪れた。「どうしてまちづくりなんでしょうか」。中心となってプロジェクトを進める地元の認定NPO法人「抱樸(ほうぼく)」の理事長・奥田知志さん(61)がこう答えた。「自己責任論が強くなりすぎて、助けてと言えない社会になっている。助けてと言えるまちをつくりたい」

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支援実績

 抱樸の前身は、00年設立のNPO法人「北九州ホームレス支援機構」。牧師でもある奥田さんは、法人設立前の1988年から、路上生活者や生活困窮者らの支援に取り組んできた。

 炊き出しや夜の街中パトロールをはじめ、住宅や就労など、その人ごとに必要な支援をするうち、法人が手がける事業は29にまで広がった。支援を受けて路上生活から脱した人は3750人を超える。

国谷さん「36年ホームレス支援、何がどう限界?」

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 国谷 36年間ホームレスの人たちを助け、29もの事業を展開して支援を広げてきました。それでも限界を感じているとのことで、何がどう限界なのでしょうか。

 奥田 出会った人にどこまでできるかということでやってきて、例えば路上からアパートに入った人は3700人を超えました。けれども、社会というバケツの底に穴が開いているので、落ちてきた人をいくら手厚く支援しても、次の人がまた落ちてきてしまうのです。

 自立支援・社会復帰といいま…

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