国債(政府の借金)の引き受け先が近い将来、足りなくなる――。そんな懸念が政府内で高まっている。最大の買い手だった日本銀行が政策を転換し、購入額を減らしていくからだ。いまのように国債の発行を高水準で続ければ、金利が大きく上昇して経済に悪影響を与えるおそれがある。だが、総選挙では財政健全化の議論は深まらず、巨額の経済対策により、国債の増発に歯止めがかからなくなりそうだ。

 「今後、日銀以外のさまざまな投資家層に、さらに国債を保有していただくことが、重要なテーマになっています」

 10月中旬。東京都内の会議室で、パソコン画面に向かってこう力を込めたのは、財務省の職員だ。オンラインの投資家向けセミナーで、全国各地の約200人が参加した。

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国債について投資家らにオンラインで説明する財務省の職員=2024年10月18日、東京都中央区

 同省は今夏から、12の証券会社に協力を仰ぎ、幅広い層へ国債の情報発信を強めている。今回は中堅の東海東京証券に取引先の参加を呼びかけてもらった。

 セミナーに参加したある自治体の担当者は「財務省が登壇するのは珍しいので参加した」と話す。ただ、「運用に回せる資金は限られている。国債より利回りが良い地方債で運用する方針は変えない」という。

 政府が国債の売り込みに躍起になるのは、市場の環境が大きく変わろうとしているからだ。

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