3世帯が暮らす空室だらけの集合住宅の前に、2トントラックが大音量の音楽を鳴らしながら乗りつけた。北海道夕張市の山あいにある楓・登川地区。週に1回、決まった時間にやってくるコープさっぽろゆうばり店の移動販売車だ。
雪が積もり始めた11月下旬。3世帯の4人が乗り込むと、車内は熱気を帯びる。「イカある?」「天ぷらは?」。ショーケースに並ぶ卵や納豆、野菜や仏壇用の花が次々と売れていく。トラックは地区内4カ所で十数人を待ち受ける。姿を見せない住民は、ドライバーが玄関口まで呼びに回る。
「足腰が弱って郵便局まで行けない」
町内会長を務める96歳の藤…