名古屋市電(路面電車)が廃止されて今年で50年。昭和40年代の市電全盛期の姿と名古屋の町並みを記録した写真集「市電のある風景・名古屋」が刊行された。大学の鉄道研究会にも所属した50年来の「撮り鉄」によるありし日の市電は、昭和のノスタルジーへと見る人を誘う。
撮影したのは、滋賀県野洲市の浅野修さん(77)。名古屋市出身で生家の近くを市電が走り、幼少期から汽車を見るのが楽しみだったことを覚えている。名古屋大学に進学し、迷わず鉄道研究会の門をたたいた。授業がない土曜午後と日曜にはカメラを手に市電を追いかけ、街を駆け回った。
「当時、鉄道ファンは世間で認知されておらず、極めてマイナーな趣味でした。街中で市電に向かってカメラを構えるのにドキドキしたことを覚えている」と振り返る。
市電は1898年5月、名古屋電気鉄道(現・名古屋鉄道)が国内で2番目の電気鉄道として笹島―県庁前間で開業した。1922年に市が買収。その後、中村電気軌道や下之一色電車軌道などの運営が市へと一元化された。
総延長は最大106・3キロに及び、55年度には乗客人員が戦後最高の68万2千人に達した。
世界の潮流から外れた名古屋 悔やむ「撮り鉄」
だがその後はバスや地下鉄…