【動画】1966年当時の袴田巌さんの取り調べの音声。取調官の厳しい追及を受け、最初は無実を訴えていた袴田さんも言葉を発しなくなる=関係者提供

袴田さん事件58年 なぜ死刑囚にされたのか

 取調官「お前さんの全てについて科学的に検査をした結果、来てもらったんだよ、今日は」

 事件発生から49日後の1966年8月18日、静岡県警は当時30歳の袴田巌さんに任意同行を求め、取り調べを始めた。

 事件4日後には、袴田さんの周辺は騒々しくなっていた。全国紙では「従業員『H』浮かぶ」と報道された。県警は参考人として聴取し、パジャマを発見。血痕があり、血液型が被害者のものと一致したとされた。

 弁護団によると、取り調べは合計約430時間。うち約47時間分の録音が、2014年に県警の倉庫で発見された。のちに弁護側に開示された。

テープから再現する初日の取り調べ

 袴田さんは当初から明確に否認していた。

 取調官は「アリバイがない」「手指に傷がある」などと追及するが、袴田さんは「寮で寝ていて、(被害者宅が)火事と聞き消火活動をした。トタン屋根で手を切った」と反論。堂々巡りが続く。

 2時間以上が経った頃には、袴田さんが感情をぶつける。

 袴田さん「お前ら、どうしても犯人だって、仕立てんだから俺を」

 取調官「そんなお前、ふてくされたようなこと言うんじゃないよ」

 袴田さん「ふてくされたくも…

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