2025年は参院選や東京都議選が控える「選挙の年」です。18歳選挙権が2016年に導入されましたが、選挙に立候補できる「被選挙権年齢」は、地方議員や衆院議員が25歳、参院議員や知事が30歳で、戦後に新しい選挙制度ができてから一度も変わっていません。
若者の政治参加につながる期待がある半面、慎重な意見もある「被選挙権年齢の引き下げ」。SNSで読者とやり取りしながら取材を進める「#ニュース4U」取材班に、さまざまな意見が寄せられました。
若者の課題、当事者が政策に
「若い世代の想像力をいかした提案ができる。必要な経験は早くから積むべきだ」。宮城県の高校3年の女子生徒(18)は、引き下げに賛成だ。
昨秋の衆院選で初めて投票したが、同世代の候補者はいなかった。10代にとって、政治家は職業の選択肢の一つとしてかけ離れすぎていると感じた。
「若者のメンタルケアなどは当事者が政治家にならなければ政策に反映されにくいのでは」と、年齢制限の弊害を懸念する。
- 政治家めざす23歳「すぐにでも立候補したいのに」 阻んでいる壁は
「参議院に立候補できる年齢は30歳からなんだと驚いた」。千葉県の無職女性(67)は、立候補の年齢について深く考えたことがなかったという。
「志があるならば、30歳からでなくてもよい」と考える。
10~20代の若者が「闇バイト」経由で強盗に関与したとされるニュースが相次ぐ。「若い世代が問題提起してくれれば、同世代もしっかり考えるようになるのでは」と感じる。
経験や資金はどうする
一方、東京都の30代の派遣社員の女性は、引き下げに否定的だ。選挙に出るためには、衆院選や参院選の選挙区で300万円などの供託金がかかる。「18歳で立候補の資金を用意できる人は、住む世界が違うのかなと思ってしまう」。被選挙権年齢の引き下げより、供託金制度の見直しが優先されるべきではないかと考える。
埼玉県の男性(23)は、営業職を経て市議会議員になった父親を見て、「政治家になるには経験が大事」と思ったという。
「市議の仕事は、住民の意見を聞いて利害を調整すること。年齢ではなく、どう人と関われるかが重要ではないか」
一方で、議会には若い世代が必要だとも考える。16歳未満のSNS使用を禁止する法律を可決したオーストラリア議会を例に挙げ、「大人が中心になって若年層に規制をかける場合、若い世代は圧倒的に不利」といい、同世代の意見を代弁する政治家が一定数必要と考える。「政治家としては未熟でも、若いからこそ既存の価値観にとらわれない判断ができると思う」
- 立候補年齢引き下げ、機運高まらず?「その先議論を」平成生まれ議員
「18歳選挙権のときに議論されるべき」
昨年の衆院選では、最年少の25歳を含む20代の国会議員3人が誕生した。一方で、20~30代で立候補した161人のうち、当選したのは30人。当選者全体の6%だった。
被選挙権年齢について、総務省は「社会的経験に基づく思慮と分別を踏まえて設定された」と説明する。
海外の例はどうか。経済協力開発機構(OECD)加盟国の国会(下院)の被選挙権年齢を調べた国立国会図書館の2020年の調査によると、36カ国中21カ国が「18歳から」だった。「21歳から」は9カ国、日本と同じ「25歳から」は米国など6カ国だった。このとき25歳からだった韓国は、2021年の法改正で18歳からに引き下げた。
日本選挙学会の理事を務める岩崎正洋・日本大学教授(政治学)は「2016年に選挙権が18歳に引き下げられたとき、被選挙権も同じように議論されるべきだった。現在の線引きでは、若い有権者が『同世代の候補者』と感じにくい」と指摘する。
「人生経験は乏しくとも、若い人の意見を反映させるという意味での導入なら、切り分けて考えるべきだ。供託金も、『学生でもこれくらいだったら出せる』というラインを議論する必要がある」と語る。
投稿をお待ちしています
「#ニュース4U」は身近な困りごとから政治についての疑問まで、幅広くみなさんの投稿をお待ちしています。LINEのID「@asahi_shimbun」かこちら(https://lin.ee/OVdU8Bf)から「友だち追加」すると、取材班とやりとりができます。メール([email protected])も歓迎します。過去の記事は特集ページ(https://www.asahi.com/special/n4u/)で。