志賀原発2号機の燃料プール=2024年2月29日、石川県志賀町、北陸電力提供

詳しく知りたい〈2〉

 原発の使用済み核燃料は、どのようなものなのでしょうか? 島根原発を抱える中国電力によると、放射線や熱を発し続けており、原発建屋内の水を張ったプールに移して10年ほど冷やすといいます。一問一答形式で詳しく紹介します。

【連載】核燃料のゆくえ

原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。

 Q 中間貯蔵施設で一時保管する原発の使用済み核燃料は、どんな物体なの?

 A 原発で使う核燃料について、まず説明しよう。大手電力各社でつくる電力中央研究所などによると、ウランの燃料ペレットを多数詰めた直径約1センチ、長さ4メートル前後の金属製の核燃料棒を、63本といった本数で束ねて燃料集合体にする。中国電力島根原発2号機は、燃料集合体560体を収納できる。総重量は約150トンで、うちウラン重量は約97トンだ。

 Q 原発で使った後はどこに移すの。

 A 中国電力によると、通算で4~5年ほど使用した後、原子炉から原発建屋内のプールへ移して、水を循環させて冷やす。電力中央研究所によると、移動後も放射線や熱は発生し続ける。

 Q 冷やした後の使用済み核燃料の放射能や熱は?

 A 電力中央研究所によると、プールで10年間冷やした後のウラン1トンあたりの放射能は1.75京(1.75×10の16乗)ベクレル、熱は1380ワットになるという計算例がある。いずれも、原子炉から取り出した直後の約1千分の1の数値だ。1380ワットの熱は、消費電力1300ワットの家庭用電気ヒーターを想像するとわかりやすい。

 Q プールで冷やした後はどうするの。

 A 中国電力によると、プールで10年程度冷やした後、燃料集合体を「キャスク」と呼ばれる金属製容器に移す。中国電力が使うキャスクには直径2.4メートル、高さ6.4メートルの円柱容器がある。原子炉等規制法に基づく規則で、①核燃料が核分裂の連鎖反応を起こさないようにする②放射線を遮る③内容物を適切に閉じ込める④熱を外に逃がす、と定められている。

 Q キャスクの安全性は?

 A 電力中央研究所は2010年、航空機が衝突した場合を想定し、ボーイング747型のジェットエンジンをモデルにした縮小模型を時速206キロで、キャスクの縮小模型に衝突させた実験結果を発表した。「ただちに密封性能に影響を与えることはないものと推察される」との結論だった。

 Q ところで、プールの中の使用済み核燃料をどうやってキャスクに移すの。

 A キャスクをプールに沈めて水中で移し、キャスクをつり上げて水を抜く。真空乾燥させてヘリウムガスを入れ、検査した上で一時保管場所に移動させるんだ。

 Q キャスクに移した最近の事例は?

 A 中国電力によると、島根原発2号機では06年9月15日にキャスクに移したのが最近の例だ。燃料集合体192体(計約60トン)をキャスク6基に入れ、再処理工場を建設中の青森県六ケ所村に搬出した。その時の燃料集合体1体の熱は約300ワットだったというよ。(興野優平、松田史朗)

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