森重昭さん=広島市西区、上田潤撮影

 平和活動に貢献した人に贈られる「谷本清平和賞」の今年の受賞者が、被爆者で歴史研究家の森重昭さん(87)に決まった。公益財団法人ヒロシマ・ピース・センターが10月3日、発表した。

  • 広島で被爆死の米兵「12人」 76年前の米公文書の存在が明らかに

 森さんは国民学校に通っていた8歳のとき、爆心地から約2.5キロの己斐町(現・広島市西区)で被爆した。爆風に吹き飛ばされたが、大きなけがはなかった。

 大学卒業後は山一証券や日本楽器製造(現・ヤマハ)で勤務。会社員生活の傍らで原爆犠牲者の調査をするうちに、広島に投下された原爆で米兵捕虜が犠牲になったことを知る。

 米政府が自国民の被爆死を長らく認めない中、被爆死米兵の数を12人と突き止め、消息を遺族に知らせた。2016年には現職の米大統領として初めて広島を訪れたオバマ氏と対面したことでも知られる。

 同法人は受賞理由を「原爆の悲惨さに国境や人種の違い、敵も味方もないという強い信念を持って活動に取り組んできた」と説明。森さんは取材に対し、「世界中で戦争が続き、たくさんの人が命を落としている今こそ『戦争というものは国籍に関係なく犠牲者が出る』というメッセージを伝えていく意味がある」と話した。

 同賞は原爆孤児らの支援に取り組んだ谷本清牧師(1909~86)の功績をたたえ、87年に設けられた。過去に俳優の吉永小百合さんや漫画家の故・中沢啓治さんも受賞している。(魚住あかり)

共有
Exit mobile version