10年前に広島で開催された世界核被害者フォーラム=2015年11月23日午後2時30分、広島市中区の広島国際会議場、大隈崇撮影

 世界で「核」の被害を受けたと訴える人たちが集う「世界核被害者フォーラム」が10月5、6日、広島市で10年ぶりに開かれる。今年は被爆80年。広島と長崎の被爆者に注目が集まる中、核実験や核兵器の製造過程、原発事故などによる核被害にも改めて光を当て、補償を求めていくという。

 市民団体「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)」と米ニューヨークの反核団体「核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト」が主催する。広島市中区のJMSアステールプラザを会場に海外から約10人、国内から約20人の核被害者らを招く。

 ウラン採掘に携わり、健康被害を訴えるアメリカの元労働者やアフリカのウラン鉱山での被害調査をした専門家らが実態を話す予定だ。アメリカの核実験場となった太平洋・マーシャル諸島の関係者のほか、広島の被爆者や国の援護対象の区域外にいた長崎の「被爆体験者」も参加する。

 1月7日に広島市役所で会見した「核の無い世界のためのマンハッタン・プロジェクト」共同創始者の井上まりさんは「これ以上、世界で核被害を増やさないために何ができるかということを日本から発信したい」と話した。

 核兵器禁止条約は被害者の援助と環境の修復について定めているが、対象は核兵器の使用と実験によって被害を受けた人、としている。井上さんは「広島、長崎の原爆の原料としてベルギー領コンゴのウランが必要だったが、その採掘で被害を受けた人は救済対象になっていない」と述べ、核兵器の開発過程で被害を受けた人なども含めて、核被害者を広く定義すべきだと訴えた。

 また、同条約は原子力の「平和利用」について、「締約国の奪い得ない権利」と前文で言及している。井上さんは、3月にある同条約第3回締約国会議の議長国・カザフスタンが世界有数のウラン輸出国であることに触れ、「核禁条約では原発被害者が救済されることはなく、原発は推進してよいということが締約国から発せられていることに矛盾を感じる」と話した。

 HANWAの森滝春子共同代表は「核被害の実態を世界中から持ち寄って、ネットワークを作ることが大切だ。孤立した被害地の人を力づけることにもなる」と語った。

 主催団体は900万円を目標に会場や通訳、招待にかかる費用の寄付を募っている。寄付は個人1口千円、団体1口5千円。郵便振替で「世界核被害者フォーラム・実行委員会」(01380・4・103175)へ。

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