九州最大の歓楽街、福岡市・中洲のはずれ。同市を東西に走る国体道路に面したところに、ソウルバー「グッディーズ」はある。

ニュースレター「アナザーノート」

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 店頭には、星条旗の派手なスーツを着たジェームス・ブラウンの人形がマイクを握って立っている。クール&ザ・ギャングやマイケル・ジャクソンのサイン入りLPレコードのジャケットが、通りに面した壁に飾られ、アイザック・ヘイズが音楽を手がけた映画「シャフト」の特大ポスターが、銃を構えて街行く人をにらみつけている。

 そしてこんな口上が掲げられているのだ。

 「ソウルミュージックは黒人の魂のヒダの中から生まれた歌だ。多すぎるほど流された黒人の血から生まれた、メッセージソングや街角の愛の歌、生きることの喜びだ……」

 さぞ一家言のある常連客ばかりで、素人の一見(いちげん)さんが入りづらい店かと思うと、さにあらず。半地下の階段を下りて重い扉を開くと、「いらっしゃい」と陽気な声でマスターの北原勝巳さん(69)が出迎えてくれる。一瞬、黒人かと思われたが、焼いているからであって、生粋の博多っ子である。

「ソウルひとすじ」の博多っ子

 1967年12月10日、オーティス・レディングが飛行機事故で亡くなった。その急死を悼んで、在日米軍向けのラジオ放送FENが彼の歌をかけ続けた。福岡空港は72年まで米軍の板付基地だったため、フェンスの向こうは米国だった。福岡出身の鮎川誠も財津和夫もFENでビートルズを知った。北原さんもFENでオーティスを初めて聞いた。「この声は誰かいな、と。それからハマった」。小4から始めた新聞配達で得たお金で初めて買ったのが、オーティスの2枚組ベスト盤だった。

 「以来、僕は横道にそれんで…

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