ドキュメンタリー映画「中村地平」の一場面で、台湾で起きた霧社事件の現場=日州ドキュメンタリー提供

 台湾など南方が舞台の文学を提唱し、芥川賞の候補になったこともある作家の中村地平(1908~63)が静かな注目を集めている。生涯を追ったドキュメンタリー映画(日州ドキュメンタリー)が国内各地で上映され、かつて暮らした台湾にも渡った。

 監督・脚本は宮崎県出身の美術家・小松孝英さん(45)。「忘れられた郷里の先人」がテーマの映画制作を手がけ、2021年、戦前の台湾に近代美術の種をまいた画家・塩月桃甫(とうほ)(1886~1954)の作品を完成させた。今回が2作目だった。

 2024年3月から始まった上映会は、宮崎を中心に東京、大阪、福岡など約20カ所を巡り、8月には桃園映画祭(台湾)の招待作品に選ばれた。

 並行して様々な動きがあった。6月には20年ぶりの新刊となる短編小説集(黒潮文庫)が出版された。

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