北海道新幹線の渡島トンネルの掘削現場を視察する有識者会議の委員ら=2024年5月27日、北海道北斗市の台場山工区、野田一郎撮影
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 北海道新幹線の札幌延伸工事が遅れている問題で、2030年度末としてきた開業時期を再検討する国土交通省の有識者会議の委員らが、工事が難航している北海道南部の「渡島トンネル」の掘削現場を視察した。座長の森地茂・政策研究大学院大学客員教授は、新たな開業時期の目標について「ある程度幅を持たせることになる」との考えを示した。

 渡島トンネルは現在の終着駅・新函館北斗駅から札幌方面へ向かって最初のトンネルで、北斗市、厚沢部(あっさぶ)町、八雲町にまたがり、長さ32.7キロ。今回の視察にあわせて、工事が3~4年遅れている台場山工区(北斗市、3500メートル)の掘削現場が初めて報道陣に公開された。

 同工区は通常より崩れやすく圧力が高い軟弱な地質で、22年3月にはトンネル坑内に土砂(推定350立方メートル)が流入するなどして、工事再開まで7カ月かかった。掘削前に崩れにくくする処置や、圧力に強い構造にする対策を実施しているため、1カ月あたりの進行は計画の65メートルから約20メートルに低下。掘削延長は1330メートル、掘削率は38%にとどまっている。

 現在、500メートル先までボーリング調査をして、地質の状態を調べながら掘削を進めている。視察後、取材に応じた森地座長は「(今後の工事で)何が起こるか、ボーリングなど可能な限り手段を講じて調べ、なるべく正確な工期を想定したい。ただ、(トンネルという)見えない所のことなので、確実にいつまでにできると想定するのは難しい」と指摘。「順調にいけばこれぐらい、リスクがあればこれぐらい、というように幅を持たせることになるだろう」と話した。

 建設主体で国交省所管の独立行政法人「鉄道・運輸機構」が今月8日、30年度末の開業は「極めて困難」と国交相に報告。12年に着工した新函館北斗―札幌間(約212キロ)は全体の約8割をトンネルが占め、現時点で3~4年の遅れが出ている。沿線自治体からは「開業時期を示してほしい」との声が上がっている。(野田一郎)

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