ロケットの打ち上げ前の準備をする東海大の学生たち=2024年3月6日午前9時35分、北海道大樹町
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 国内で民間ロケットの発射場の先駆けといえる北海道大樹町の「北海道スペースポート(HOSPO、ホスポ)」。官民出資会社が運営し、開かれた宇宙港をめざし活動する。その戦略を探った。

 3月6日午前、大樹町のホスポ近くの農地。「シュパー」という音を響かせ、東海大学(神奈川)の学生たちのロケットが大空高く飛び立った。全長約1.7メートルの機体は高度456メートルに到達し、しっかりとパラシュートを開いて、地上に落ちてきた。学生たちは「やったー」と歓声を上げ、抱き合って喜んだ。

 大学公認で学年横断的に取り組んでいる「学生ロケットプロジェクト」の一環。ハイブリッドロケットの宇宙空間到達をめざし、1995年から活動している。同町内では2004年から打ち上げ実験を行っている。

 この日は、主目的だった先端部分の分離と、パラシュートの放出を2段階で行う機構が正常に作動。各種データも取れ、実験は成功した。打ち上げのプロジェクトマネジャーを務めた谷田貝萌絵さん(3年)は「今までがんばって来たものが形になってうれしい」と笑顔で話した。

 実験は、ホスポを管理・運営する官民出資会社「スペースコタン」が協力。整備のための格納庫の提供や、報道対応のサポートなどを行った。

 堤大樹さん(4年)は「大樹町は、広大な土地が広がり、陸にも海にも発射できる国内でもレアな場所。ホスポの協力を得られるのも大きい」と話す。

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 大樹町は、ロケットの打ち上げに適しているとされる南東側に海があり、1985年から「宇宙のまちづくり」を掲げて、航空宇宙産業の誘致などを進めてきた。95年には滑走路などを備えた多目的航空公園を整備。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験場も置かれ、政府や大学、民間企業の実験に長く使われている。

 特に射場としての認知度を高めたのが、実業家の堀江貴文氏が出資し、同町を本拠地とするロケットベンチャー「インターステラテクノロジズ(IST)」の存在だ。2019年5月、国内民間単独で初めて観測ロケット「MOMO」(全長10メートル)の宇宙空間到達に成功した。

 この時は、元の防衛省技術研…

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