北海道の基幹産業の一つである酪農。近年、コロナ禍による需要低下、円安やウクライナ戦争などによる飼料高騰など、次々と困難に襲われている。十勝地方のメガファーム経営者で組織する十勝酪農法人会の井下英透会長に、現状や政治に求めることを聞いた。

生乳出荷戸数の減少

 北海道畜産振興課が5月に発表した資料などによると、2月現在の道内の生乳出荷戸数は4600戸。30年前の1994年は1万1384戸だった。昨年2月~今年1月に25戸の新規参入があったが、249戸が離脱。減少率は4.64%と前年に続いて大きな減少となった。これまではおおむね2~3%程度だった。離脱理由として「高齢化と後継者問題」が最も多く32.1%。「乳雌育成部門への経営転換」(14.5%)、「経営者の死亡」(12%)と続くが、「負債問題」による離農も11.2%あった。

 「2004年、豊頃町の4戸の酪農家が集まり、『農事組合法人Jリード』を設立しました。現在は株式会社化し、約1600頭の乳牛を飼育して、年間約9千トンの生乳を生産しています」

 「人口減少でどんどん酪農家が減っていく将来に向け、大規模化によるスケールメリットを生かした経営で、生産量を増やしていくことが必要と考えました。『日本の生乳生産を守り、日本の酪農をリード』していこうとの思いを社名に込めました」

 「ところがコロナ禍以降、今、酪農は最悪の状態と言えます。はっきり言って、搾れば搾るほど赤字になると言ってもいい。飼料の値段は、円安やウクライナ戦争の影響を受け、3年ぐらい前と比べると、約1.5倍と、高止まりしています。我が社で言うと、飼料代はコストの約半分を占めますが、3年前と比べて約1億円も増えました。そのほか、燃料代、電気代、施設で使用する機械の購入費も上がっています」

 「一方、実は、乳価はそれほ…

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