長く内戦状態が続いていたシリアで、反体制派が、軍事的な優位を固めていたアサド政権に対して攻勢をかけ、北部にある第2の都市アレッポの大部分を制圧したとされます。膠着(こうちゃく)状態にあった内戦は、なぜ今動き出したのか。アサド政権は今後どう対応するのか。中東地域に詳しい中東調査会の高岡豊・協力研究員と、立命館大の末近浩太教授に、背景や今後の見通しを聞きました。
- 【そもそも解説】長期化のシリア内戦に動き いつ、なぜ始まった?
高岡豊・中東調査会協力研究員 「政権軍、弱体化の可能性」
シリアの過激派組織「シャーム解放委員会」(HTS、旧ヌスラ戦線)などがアレッポの大部分を制圧することができた背景には、近年の国際紛争の影響が如実に表れている。レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、昨年10月のパレスチナ自治区ガザをめぐる戦闘が勃発して以来、イスラエルと攻撃の応酬を繰り広げてきた。イランもイスラエルとの対立で消耗し、ロシアもウクライナ侵攻の長期化で、かつてほどの戦力を振り分けられなくなっているようだ。
(態勢を立て直して反撃に備えるとして、アレッポからの一時的な撤退を表明した)アサド政権軍も近年のシリア経済の低迷によって資金難が進んでいたのかもしれない。米国が2020年に課した対シリア制裁「シーザー・シリア市民保護法」(シーザー法)によって、シリア経済は相当に締め上げられている。アサド政権は内戦時に積極的に民兵組織を動員して戦力を補ってきたが、もはや維持できなくなり、軍の弱体化が進んでいた可能性がある。
今後の展開について、政権側…