徳島新聞を発行する一般社団法人徳島新聞社(徳島市)の記者らが3月、取材や記事執筆を一時放棄するストライキをした。背景を取材すると、地方に忍び寄る「ニュース砂漠」への危機感が浮かび上がった。
ストがあったのは3月14日。組合員約120人のほぼ全員が午後2時から約2時間、業務から離脱した。同社でのストは29年ぶりだ。
発端は昨年11月、経営側が取材や記事執筆などを担う編集部門を分社化する計画を労働組合に示したことだ。2025年以降の新入社員の採用は新会社で行い、給与水準は現在の65%に抑えるとされた。
これに対し、関連会社も含めた若手従業員らが「若手を大事にする社の姿勢が感じられない」などと反対の意見書をまとめたことを契機に、労組は撤回を求めて経営側との団体交渉に乗り出した。
労組によると、経営側は、分社化による人件費削減に踏み切る理由について「(徳島を)ニュース砂漠にしてはならない」と主張したという。
- 【初報】徳島新聞労組がストライキ通告 経営側に編集部門分社化の撤回求める
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「ニュース砂漠」とは、地方紙の衰退や廃刊などで地元ニュースが消えた米国の地域を指す言葉だ。
徳島新聞の朝刊部数は、1994年6月の約24万部から2023年4月には約16万8千部に減った。人件費を削らなければ、事業が持続できなくなり、ニュースの空白地帯が生まれてしまうという理屈だった。
記事後半では、茨城県で起きた地元紙の廃刊例や識者の見方を紹介します。
これに対し、同社の労組などが加盟する新聞労連は抗議声明を発表し、「新聞発行を支える私たち、そして次世代の絶望が『ニュース砂漠』を広げるという事実に、経営陣は目を背けています」と反論した。
経営側の計画通りに編集部門…