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明日への一石~大変革期を考える
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記者解説 国際報道部・喜田尚

 国際社会は混迷している。米国や欧州の主要国は「ダブルスタンダード」(二重基準)を批判されている。ロシアのウクライナ侵攻は批判するのに、民間人に大量の犠牲者を出しながらパレスチナ自治区ガザへの攻撃を続けるイスラエルを支援している。

 30年以上前に見た光景が忘れられない。湾岸戦争が終わった1991年2月28日、イラクの隣国ヨルダンのクウェート大使館で祖国解放を祝うパーティーが開かれた。クウェート外交官の家族らが着飾り、厳重に警戒された門をくぐっていく。それを地元のパレスチナ難民らが遠巻きに見つめていた。目には怒りとも羨望(せんぼう)ともつかない感情が浮かんでいた。

 クウェートを侵略したイラクを米国中心の多国籍軍が攻撃し、撤退させたのが湾岸戦争だ。東西対立で機能してこなかった国連の安全保障理事会がまとまり、武力行使を容認。89年の冷戦終結が世界を変えたことを印象づけた。

 「悪役」だったイラクのフセイン大統領は、批判をそらそうとパレスチナを占領するイスラエルにミサイルを撃ち込んだ。それを熱狂的に支持したパレスチナの人々は、イラクの敗北で世界の変化から取り残された形だった。

 私の頭からはクウェートが解放される一方で、パレスチナの占領が放置されるのはなぜかという疑問が消えなかった。クウェート大使館前に集まった人々の姿が目に焼き付いたのはそのためだ。

ポイント

 冷戦終結後の1990年代、国際社会は非人道行為に共に対処しようとしていた。欧米は人道主義などを掲げつつ力の論理に頼り、いまでは影響力を後退させている。国際社会の倫理基準の回復には、国家の枠組みを超えた市民社会の動きも重要だ。

 だからこそ、パレスチナの暫…

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