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ミャンマー東部カレン州ミャワディーで2024年4月15日、パトロールの準備をする少数民族武装勢力・カレン民族解放軍(KNLA)の兵士ら
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 ミャンマーの内戦に収束の兆しが見えない。2021年のクーデターで全権を握った国軍に民主派勢力が抵抗を続け、昨年10月に複数の少数民族武装勢力が国軍への一斉攻撃を始めてから1年が経つ。戦線拡大で国軍の弱体化が進む中、中西嘉宏・京都大准教授(ミャンマー現代史)は「国軍統治の限界」を指摘する。

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 ――武装勢力が国軍を追い込む背景には何があるのでしょうか。

 今年8月には、北東部シャン州にある軍管区司令部が少数民族武装勢力・ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)に奪われました。国軍が司令部を失うのは歴史的な事態です。

 少数民族の一部はミャンマーの独立(1948年)直後から、自治権などを求めて国軍と戦ってきました。しかし国軍が優勢で次第に隣国との国境へと追いやられていきました。国境地域は山岳地帯が多くて国軍が制圧できず、資源の密輸などで財源を確保することで武装勢力は生き延びました。

 そこで国軍は一部の武装勢力に自治区や利権を与えるなどの政治的な取引によって、何とか国境地域の安定を保ってきました。

 クーデター後、この安定の仕組みが崩れました。複数の勢力が国軍に反発し、ラカイン州拠点のアラカン軍(AA)などは停戦を破棄。武装勢力にはそれぞれの事情がある中、「国軍が敵」という共通認識で連携しています。戦線が増えるほど国軍の対応は行き詰まり、武装勢力側が優勢となっているのが現状です。

歴史的になかった連携

 ――異なる利害があるとされる武装勢力間の連携は、どれほど強固なのでしょうか。

 少数民族武装勢力は過去も国軍との交渉のために連携を組むことがありましたが、現在のような連携は、歴史的にはなかったことです。民主派の若者たちもそこに加わっています。国軍も警戒していた事態でしょう。

 ただし、国軍を共通の敵とし…

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