幕末に開国の舞台となった下田港。高級魚キンメダイの水揚げ日本一を誇る。華やかだった港町・下田は、景気低迷や人口減少に伴って衰退の道をたどる。そんな地域を盛り上げようと、すしを通した「つながり」に価値を見いだした若き料理人がいる。

 創業88年の老舗すし店「美松寿(みまつず)し」の4代目、植松隆二さん(33)は昨年11月、すし店「寿(す)しらぼ三〇二(みまつ)」をオープンした。8席の立ち食いスタイル。ネタケースを置かず、握る様子が客によく見えるようにした。店は了仙寺(りょうせんじ)の敷地内の一角にある。黒船で来航したペリー提督との交渉の場となり、日米和親条約付録の下田条約が調印された寺だ。同級生の副住職から提案され、この場所に決めた。

 キンメダイ、マグロ、コハダなど握りはすべて1貫300円。下田港で仕入れた新鮮で極上のネタばかりだ。なぜこんなに安く提供できるのか。それは「副業すし職人」が握るからだ。

 会社員や自営業者、大学院生…

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