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東京地裁が入る庁舎=東京都千代田区

 起訴状に被告の前科を書いたのは裁判官に予断を与える可能性があり、起訴は違法だ――。脅迫事件の公判で東京地裁がこう判断し、裁判を打ち切る「公訴棄却」を言い渡したことが分かった。25日付の判決。

 被告の女性は交際相手の妻に対し、妻の長女の写真の顔部分を刃物で切りつけた画像を携帯電話で送り、脅迫罪に問われた。検察側は起訴状に、被告が以前、妻らへの脅迫罪で略式命令を受けたと書いていた。

 刑事訴訟法は「裁判官に予断を生じさせる」内容を起訴状に書いてはいけないと定める。この規定について1952年の最高裁判例は「事件について先入的心証を抱くことなく、白紙の状態で初公判に臨むため」と指摘。前科を起訴状で示すのは「今回の事件も有罪だ」との思い込みにつながりかねない、という趣旨だ。

 25日の初公判で熊代雅音裁判官は「前科の記載は予断を生じさせるおそれがある」と判断。検察側は被告の行為が脅迫にあたることを明確にするためだと反論したが、判決は「必要性が認められない」と退け、違法で無効な起訴だと結論づけた。

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