遠隔操作してさまざまな業務を担う「分身ロボット」の活用の場が広がっている。東京都小平市の病院では、5月から国内初の病院での実証実験も始まった。分身ロボットの操作を担う「パイロット」の仕事を通じて、夢を叶えた女性もいる。ロボットの活用は、人手不足の解消だけでなく、外出困難者にとって新しい仕事の場として期待されている。
実証実験がスタートしたのは、小平市の「むさしの病院」。初日の5月13日、身長約120センチの分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」が玄関に登場し、訪れた患者たちを手際よく案内していた。
「おはようございます。本日はご予約でしょうか」「左手の受付にお進みください」
ロボットから聞こえる声は、人工知能(AI)ではない。この日の声の主は、静岡県に住む女性で、自宅からオリヒメを操作し、訪れた患者たちに明るく話しかけていた。患者たちは、「どこから動かしているの?」「こっちが見えている?」と話しかけたり、手を振ったりしながら、オリヒメとのやりとりを楽しんでいた。
オリヒメは、外出困難者の社会参加を支える「オリィ研究所」(東京都中央区)が開発した。カメラやマイクなどが内蔵されており、パソコンやタブレットを使って遠隔操作ができる。会話はもちろん、顔の向きや手を動かすことも可能だ。自宅でオリヒメを操って働く人たちは「パイロット」と呼ばれ、現在全国に80人ほどいる。病気や育児などで、外で働きたくても働けなかった人が、自宅にいながらオリヒメを通じて「職場の一員」として働くことが可能になった。
病気で閉ざされかけた夢への道
「夢がかなうとは。うれしいというより、衝撃です」
そう興奮気味に話すのは、小平市の根本ありささん(26)だ。車いすで生活する根本さんは今、同病院での実証実験でパイロットの1人を務めている。
看護師になることが小さい頃…