2009年の初夏。受診先の国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)で、ななえさんは初めて、おなかの赤ちゃんのエコー画像を見た。妊娠5カ月になっていた。

 この日、ななえさんと夫は医師から二つの大事なことを告げられていた。一つは、赤ちゃんの性別。男の子だった。

 もう一つは出生前の遺伝子検査の結果、赤ちゃんが、ななえさんと同じ遺伝性の難病である、ということだった。「オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症」という、8万人に1人とされる代謝異常の病気だ。

とらちゃん14歳 医療的ケアとともに

 ななえさんにとっての第1子で、おなかの子の兄にあたる子も、同じ病気のために1歳8カ月で亡くなっていた。

 もしかしたら、また悲しい別れが来るかもしれない。そう思うと、これまでエコーを見ることができなかった。だが、画面に映った赤ちゃんは、激しく体を動かしていた。

 めっちゃ元気だ――。

 「会いたい」という思いがこみ上げた。夫も、同じ思いだった。

 看護師が、「サポートするよ」と声をかけてくれた。

人工呼吸器の使用や経管栄養などの医療的ケアを日常的に必要とする子どもたち。そんな「医療的ケア児」が増えていますが、課題も山積みです。14歳の寅二郎さんのこれまでと、今の暮らしを追いました。

 OTC欠損症は、体内で生じ…

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