日本近海の海水温分布をパソコンでチェックする野崎哲・福島県漁連会長=2024年7月16日、福島県いわき市小名浜、西堀岳路撮影

 関係者の理解なしに処分しない――。事故を起こした東京電力福島第一原発の処理水について、こう約束していた国が海洋放出を決定し、東電が開始して8月24日で1年。「一定の理解は得られた」などとした国に対し、福島の漁師たちは今も反対し続ける。「そこは平行線のままでも良かったのだ」と言うのは野崎哲・福島県漁連会長。どういうことか。

 ――処理水放出開始から1年たちますが、県産の水揚げ価格や小売価格に大きな影響はなく、風評被害も起きていないようです。

 「はらはらしていたので、ほっとしています。『常磐ものを応援したい』と、地元産の魚を返礼品にしたいわき市のふるさと納税の申し込みも増えたと聞きます。しかし、あくまで今のところ海水や魚のモニタリング数値に異状がないからであり、まだ廃炉まで数十年かかるうちの1年なので、東電には緊張感を持ってやってもらいたい。私たちのただ一つの願いは、福島漁業の永続と隆盛なのですから、まだまだ続く問題なのです」

必要だった責任の所在

――それで、放出開始時に「廃炉まで数十年かかっても最後の一滴まで反対し続ける」とおっしゃっていたのですね。

 「流されては困るものを流されてますからね。放出は2021年に、菅義偉首相(当時)が決定した。首相が『宣言』したのだから、どれだけ反対があっても放出するんだろう……との前提で、福島の漁業を永続させるにはどうしたらよいのかと私たちは考えてきました」

 「国側は、風評被害の予防策…

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