原告の男性は買い替えた小さなストーブ(右奥)を台所に置き、約3カ月間その近くで寝ていたという=2024年10月23日、札幌市、上保晃平撮影

 故障したストーブの買い替え費用を生活保護受給者に臨時支給しないのは違法だとして、札幌市の50代男性が起こした訴訟の控訴審判決が31日、札幌高裁である。男性は「寒さのなか、冬眠するヒグマのように一日の大半をふとんのなかで過ごした。人間に人間らしい生活を認めてほしい」と訴えている。

 男性は2017年12月、自宅のストーブが故障し、新たにポータブル石油ストーブを購入する費用1万3590円の臨時支給を札幌市に申請した。だが市は、生活保護の開始時や暖房器具を災害で失った場合などに臨時支給を認めるとする厚生労働省の通知を理由に、男性の申請を却下した。

 男性は、灯油をまとめ買いするためにとっていたお金を転用し、ストーブを買い替えた。灯油を極力節約せざるを得なくなり、翌年2月まで「とろ火」程度の使い方しかできなかったという。水道が凍結しないようストーブを台所に置き、その近くで寝た。室温は5度ほどだったという。

 19年に市を相手取り、支給却下決定の取り消しを求めて提訴した。

 原告側は、心疾患などを抱える男性が低い室温のなかで過ごすと、生命の危険が生じると主張。厚労省の通知は必要な家具を積極的に支給する趣旨で出されたもので、市が原告の需要を無視したことは違法だと訴えた。

 22年の一審・札幌地裁判決は「買い替えは毎月の生活保護費でまかなうべきだ」として、請求を退けた。通知は臨時支給ができる場合を限定的に挙げたもので、今回の事例は要件に当てはまらないと判断した。

 原告側は判決を不服として控訴。毎月の受給額7万6720円に冬季加算1万2540円を合わせても、家財の買い替え費用をまかなうのは不可能だとして、「一審判決は生活実態を実質的に検討していない」と主張している。

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