自治体職員の名刺作成は自腹――。そんな「慣習」が、全国の自治体で続いている。公務で使う名刺の作成に公務員が自腹を切ることは妥当なのか。
新年度。札幌市政の取材を担当することになった記者は、あいさつ回りで役所の様々な部署・役職の職員と名刺交換をした。雑談を交わしながら、ふと、気になったことを尋ねた。
「同じ部署でも、名刺のデザインや台紙、文言も色々なんですね」(記者)
「自分で作っているので、デザインは自由なんです」(ある職員)
「つまり、自腹? 公務で使用する名刺なのに?」
「個人で使用するものですし、ずっと『そういうもの』と思っていたので。質問されるまで疑問に思ったこともなかったです」
その部署は、外部とのやりとりが多いと思われる幹部職員も含め自腹という。
札幌市人事課によると、名刺作成費の負担について市役所統一のルールはない。公費か自費かは各部署の判断で、詳細は把握していないという。
「支給されてないor自費が9割」→無料サービスも
いくつかの政令指定市にも同様の質問をした。
横浜市は「業務上使用する名刺については、全額公費負担」(総務局総務課)。名古屋市は「統一ルールがなく各課で作成している」とした上で、「会計室は公費で購入したプリンターを用いて、公費で購入した台紙に印刷して作成しています」。
一方、大阪市財政局は「(市全体の)総括的な規定によるものではない」としつつ、「財政局では過去からの慣習により、自費です」。
「名刺が支給されていないか、自費作成の自治体職員が9割――」
自治体職員向けの行政マガジン「ジチタイワークス」(約11・5万部)編集部が2021年春に実施したウェブアンケート(公務員145人が回答)では、そんな傾向が浮かび上がった。この行政マガジンは全国1788自治体に配布している。
ジチタイワークス事業を営む「ホープグループ」(福岡市)は、自治体広告や官民連携に関する事業など、自治体に特化したサービスを展開している。この結果を受け、21年夏、自治体職員向けに年に1回(100枚まで)、無料で名刺作成をするサービスを始めた。
記事後半では、公費負担に改めた新潟県三条市の事例や、識者の見解を紹介します。
担当者の田中悠太さんは、こ…