インドネシアで建設中の新首都ヌサンタラで2024年8月14日、演説するジョコ大統領=インドネシア大統領府提供

 インドネシアの首都ジャカルタから北東へ飛行機と車を乗り継いで6時間。カリマンタン(ボルネオ島)東部のジャングルを切り開いた造成地に、国章でもある神話上の鳥「ガルーダ」が翼を広げた姿をモチーフにした巨大な建物が姿を現した。

 インドネシア政府は今後、20年以上かけて、ここヌサンタラに首都を移転させる計画だ。新首都の「顔」となるのがこの建物。大統領府として使われる予定で、高さ約80メートル、幅約180メートルの大きさがある。

 8月17日、首都の移転計画を主導したジョコ大統領が出席するなか、この地で初めての独立記念日の式典が開かれた。重要行事の開催で、国内外に首都移転をアピールするねらいがあったとみられる。

 インドネシアは世界第4位、約2億7千万人の人口を抱える。その半分がジャカルタのあるジャワ島で暮らすが、首都圏を中心に交通渋滞や大気汚染などが深刻化している。首都移転は、こうしたジャワ島への一極集中を是正するのが目的だ。

 政府は移転に約466兆ルピア(約4兆3千億円)を投じる予定。2045年までに38の省庁・国家機関を移転させ、約80万人の公務員を移住させるという壮大な事業だ。

 新大統領府前の広場での式典には招待客のほか、外には見学にきた地元の人たちがたくさん集まっていた。アブラヤシ農家のハイルディンさん(45)は「新首都のおかげで地域に雇用が生まれた。工事も想像以上に進んでいる。今まさにインドネシアの成長を肌で感じています」と誇らしげだった。

 一方で、まだ建設途中の新首都には「元ジャングル」の面影も残っていた。足元では大きさ1センチほどの茶色いアリがせかせかと動き回り、道路脇にたたずむサルの親子とも遭遇した。

 現在の勤務地から約1200キロも離れた遠隔地への転勤を迫られる公務員たちは移転計画をどう思っているのか。その「本音」に迫ってみることにした。

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