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イランの最高指導者ハメネイ師=ニューヨーク・タイムズ

Iran Emerges as a Top Disinformation Threat in U.S. Presidential Race

 「活力に満ちたサバナ市(米ジョージア州)で、保守的なニュースや視点をお届けする信頼できる情報源」。そうアピールしているのは、「サバナ・タイムズ[Savannah Times]」と称するウェブサイトだ。別のサイト「ニオシンカー[NioThinker]」は、「洞察に富んだ進歩的なニュース源として、あなたにとって欠かせない存在になりたい」と自己PRしている。また、「ウェストランド・サン[Westland Sun]」という名称のサイトは、主にデトロイト(米ミシガン州)郊外に住むイスラム教徒の読者層を狙っているようだ。

 いずれのサイトも、表向きの顔とは別物だ。米政府高官やハイテク企業のアナリストたちによれば、これらのサイトは、イランが今年の米大統領選挙に影響を及ぼそうと活発化させている動きの一環だという。

 イランは以前から長期間にわたり、イスラエルやサウジアラビア、米国を中心に敵対国に対して水面下で情報工作を実行してきたが、その多くはこれまで、ロシアや中国による類似の工作の陰に隠れる形で行われていた。しかし、米政府や企業関係者、イラン問題の専門家らによれば、イランの最新のプロパガンダや偽情報工作は、より大胆で多様かつ大掛かりになっているという。

トランプ氏もハリス氏もバイデン氏も標的

 米政府や企業関係者らによれば、イランの工作はトランプ前大統領の再選阻止を目指していると見られる一方で、バイデン大統領やカマラ・ハリス副大統領も標的にしている。こうした動きには、米国内の対立をあおり、国際社会における米国の民主主義システムへの信頼を広範に失墜させる意図が透けて見えるという。

 「イランは、対外的な影響力を高めるための工作にますます積極的になっており、対立をあおり、我々の民主主義制度への信頼を傷つけようとしている」――。アブリル・ヘインズ米国家情報長官は最近、そう警告した。

 彼女は米国の人々に、「個人的に知らないアカウントや相手とオンラインで関わる際」には警戒を要する、と訴えた。

 ヘインズ氏が率いる国家情報長官室が今年8月、米連邦捜査局(FBI)やサイバーセキュリティー社会基盤安全保障庁[Cybersecurity and Infrastructure Security Agency]と連名で発表した声明は「イランは、今年の(米国の)選挙が自国の国家安全保障上の利益に与えうる影響という観点から、特に重大なものであると認識しており、その結果に影響を与えようとするイランの意図は強まっている」と指摘した。

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