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NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」の理事と事務局長を務めた楊井人文弁護士

 インターネット上の偽・誤情報のリスクが深刻化し、生成AIなどによって加速化するおそれがあるとして、政府はデジタル空間の情報流通の「健全性」確保に向けた検討を進めている。新たな法規制も念頭に置くが、識者らからは「表現の自由の侵害につながりかねない」との懸念の声もあがる。日本のファクトチェックの第一人者の一人、楊井人文弁護士に聞いた。

政府も偽・誤情報の発信者になり得る

 ――総務省の有識者検討会「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」が9月、ネット上の偽・誤情報や誹謗(ひぼう)中傷について対策案をまとめました。プラットフォーム事業者に①違法・有害情報の削除とアカウント停止の迅速化・透明化②ネット広告の事前審査と違法広告の掲載停止③災害時の誤情報拡散を防ぐ計画の立案――などを求め、プラットフォーム事業者や行政、新聞・テレビをはじめとする伝統メディア、ファクトチェック団体などのステークホルダー(利害関係者)が協議会を設置し連携することを提案しました。政府はこれを基に新たな検討会を設けるとともに、法規制などを検討する方針です。

 「まず大きな問題は、偽・誤情報の具体的実害を丁寧に調査、把握することなく、あいまいな理念やリスク認識の下、削除を含む情報流通の『抑制』を促進しようとしている点です」

 「有識者検討会は、偽情報が社会的混乱や民主主義への悪影響をもたらすとした上で、官民のステークホルダーが連携・協力して『安心かつ安全で信頼できる情報流通空間』を実現し、『情報流通の健全性』確保を目指すという理念を示しました」

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 「あまりに漠然とした、いかようにでも解釈できてしまう理念ではないでしょうか。これが法制度に採用されれば、権威主義国家が現に行っているような、公権力による情報への介入や排除が正当化されかねません」

 「更に問題なのは、公職者な…

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