ドラマ「北の国から」「前略おふくろ様」の脚本家・倉本聰さん(89)が36年ぶりに映画の脚本を手がけた。長年温めてきたという「海の沈黙」(22日公開)のテーマは、「美とは何か」。今作に込めた思いから、倉本さんを貫く行動原理が見えてくる。
「海の沈黙」の物語は、1枚の絵画を巡る騒動から動き出す。世界的評価を受けた画家の展覧会で見つかった「贋作(がんさく)」。しかし、問題は元の作品より優れていることだった。
取材の冒頭、「集大成的な作品だと聞いています」と切り出すと、「宣伝が勝手に作った」と倉本さんは言う。「集大成のつもりはないです」
だが、集大成と銘打ちたくなる気持ちもわかる。ヒントになったのは、鎌倉時代の古瀬戸とされた国の重要文化財が実は現代の陶芸家の作品だったという1960年の「永仁の壺(つぼ)事件」。倉本さんは、ニッポン放送の社員時代に事件を題材にラジオドラマを作っている。「このテーマは面白くて、もう少ししつこくやりたくなっちゃったの」。以来、いつか作品にと考えてきた素材だという。
「前日までみんな素晴らしい…