あさたろう(右)は斬りかかってきたきゅうべえに、「ねぎじる」にわさびと唐辛子の粉を混ぜて反撃。きゅうべえは「しなしなしな」と倒れた=「ねぎぼうずのあさたろう その1」(福音館書店)から

 江戸時代末期を舞台とした絵本「ねぎぼうずのあさたろう」は、正義感が強い主人公「あさたろう」が悪に立ち向かう、人気シリーズです。「はるがすみ~ むさしのくにの つちのかおり~」などと、浪曲調の文章もところどころに登場。そんな作品が生まれた背景について、作者の飯野和好さんがじっくり語ります。

【動画】「ねぎぼうずのあさたろう」を浪曲調でうなる絵本作家の飯野和好さん=伊藤宏樹撮影

 1990年代に東京・原宿のギャラリーで、野菜を擬人化して掛け軸に描き、展示したことがありました。浪人者のキュウリや町娘のナスといった、時代物のような設定で。武者小路実篤になったような気分で、ちょこっと文も添えて。その中に、マントのような合羽(かっぱ)を羽織って三度笠をかぶったタマネギがいたんです。

「ねぎぼうずのあさたろう」

 福音館書店、1999~2020年に全11巻。「その1」は8万部、全巻で累計27万500部。
 舞台は江戸末期。埼玉県の秩父の畑で生まれたあさたろうは、東海道をいざ西へ。道中、敵に襲われたり邪魔されたりするが、正義感を秘めたあさたろうは「ねぎじる」を飛ばして応戦する。浪曲調で、テレビアニメにもなった痛快時代物。

 95年に小学館の雑誌「学習幼稚園」で3回の連載をすることになりました。そこで、あのタマネギを思い出しました。

 でも「タマネギ」はゴロッとしていて何かが違った。長ネギの花の「ねぎぼうず」にしようと考えました。「あさたろう」は江戸時代の俠客(きょうかく)、国定忠治の子分に板割(いたわり)の浅太郎というのがいたな、ネギといえば朝早くに収穫する「朝どり」がいいな、と思ってつけました。

 連載を終え、自分でも気に入った作品ができたと思い、全部描き直して単行本の絵本にしたいと考えました。子どものころに聞いた覚えがあった昭和の浪曲師、2代目広沢虎造が得意としたような表現も加えてみました。

■「古い」「理解できない」出…

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