「血と骨」など在日コリアン社会を生々しく描いた小説で知られる作家の梁石日（ヤン・ソギル）さんが29日、老衰のため死去した。87歳だった。葬儀は親族で営む。
1936年、大阪市で在日コリアン2世として生まれる。高校時代に詩人の金時鐘（キムシジョン）さんに出会い、詩誌「ヂンダレ」の同人に。その後、印刷所経営で多額の借金を抱えたことなどから創作を離れ、職を転々とする。81年、タクシー運転手時代の経験を生かして書いた「狂躁（きょうそう）曲」（後に「タクシー狂躁曲」と改題）で小説家デビュー。93年に崔洋一監督により「月はどっちに出ている」の題名で映画化され、大ヒットした。
在日コリアンの窃盗団アパッチ族の暗躍を描いた「夜を賭けて」（94年）が直木賞候補に。実父をモデルに極道もおそれる凶暴な男の栄光と転落の人生を描いた「血と骨」（98年）は山本周五郎賞を受賞、崔監督、ビートたけしさん主演で2004年に映画化された。02年にはタイの児童虐待・売買を描いた「闇の子供たち」を発表。08年、阪本順治監督により映画化された。
