林田優さん(左)と坂佐井朋佳さん=2024年11月8日午後3時13分、水戸市文京2丁目、宮廻潤子撮影

 日本一の生産量を誇る茨城の干し芋。その製造工程では、原料のサツマイモの4割ほどが削り取られ、大部分が捨てられているという。干し芋の残渣(ざんさ)を減らすことを目的とする大学生らの団体が、その活用方法を広めている。

 茨城はひたちなか市、那珂市、東海村を中心とした干し芋の一大産地だ。茨城大4年生の坂佐井朋佳さん(22)や林田優さん(21)らは、フードロスを研究する石島恵美子教授の講義でこの問題に興味を持ち、2年前に立ち上がった「干し芋の残渣削減プロジェクト」実行委員会のメンバーになった。東海村出身の坂佐井さんは「特産品の問題を解決して地元に貢献したかった」と振り返る。

 プロジェクトでは、干し芋農家から買い取った残渣を東海村の協力企業がペースト状に加工。ペーストを使ってコロッケやモンブラン、マカロン、ポタージュなど、30品以上のレシピを考案してきた。

 いざ作ってみると、うまくいかないこともある。たとえばコロッケにしようとすると、揚げ油の中でバラバラになった。このときは電子レンジで水分を飛ばして固まるようにしたという。

 残渣であっても「思った以上に甘かった」そうだ。干し芋は収穫後に低温熟成させて甘みを引き出す「糖化」を施すため、普通のサツマイモよりも甘くなる。そのため、砂糖の量を控えめにできる利点もある。

 「こんなにおいしいのに、捨てるなんてもったいない」。メンバーは「残渣」ではなく「はしっぽ」と呼んでいる。「端っこ」から着想を得ていて、林田さんは「余り物というイメージを変えたかった」と話す。

 県内外の企業と共同で約10品が商品化された。SNSで活動を知った企業から提案を受けることが多い。老舗和菓子店や食肉製造会社ともコラボ。環境に配慮した食材を使いたいというニーズがあるからだ。商品について坂佐井さんは「農家の方も驚くほど甘くておいしい」と自信を持って紹介する。

 親子向けの食育教室にも挑戦。小中高校生を対象にレシピなどを考えてもらうコンクールも企画した。今月30日には、東海村産業・情報プラザ「アイヴィル」で表彰式とともに「はしっぽ料理」の試食会を開催する。(宮廻潤子)

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