東鶴酒造で洗米作業を見学する学生ら。右は野中保斉社長=2024年12月23日午後2時18分、佐賀県多久市東多久町別府、三ツ木勝巳撮影

 佐賀大の学生らによるオリジナル清酒「悠々知酔(ゆうゆうちすい)」づくりが今年も始まる。従来の山廃純米酒に加えて、初めてスパークリングの日本酒製造にも挑戦する。甘口で低アルコールのスパークリングで、日本酒になじみのなかった人や若者にもアピールしたいという。

 取り組むのは、大学院農学研究科と大学農学部の応用微生物学研究室に所属する学生計14人。県内の酒蔵と連携し、現地で指導や助言を受ける。今回の「先生」は東鶴(あずまつる)酒造(多久市)だ。

 原料の米は、同大の農場で収穫した飯米の「さがびより」。酒造好適米ではない米で、おいしい酒をつくることも目的だ。

 酵母は、同研究室で分離したものを使い、「微生物の働きを感じられる製造方法をとる」と農学部4年の池田心さん(22)は話す。山廃純米酒は酵母に加えて、乳酸も使用し、重厚感のある辛口に仕上げ、切れのある酒をめざすという。

 スパークリングでは、瓶内2次発酵という手法で炭酸ガスを発生させる。濁り酒を瓶詰めする際に、澱を一緒に詰めることで、酵母による活発な瓶内2次発酵を起こして炭酸ガスを生成させ、自然な泡立ちを生みだす。

 池田さんは「皆さんに楽しんでいただけるようなお酒づくりに携われるのが今から楽しみ。新しいスパークリングと伝統的な山廃だけに、そこの違いも楽しみながらつくれたらいいなと思っています」と語る。

 東鶴酒造では、2010年代後半ごろから、スパークリング日本酒を製造している。野中保斉社長(44)が、暑い時期でも飲みやすい日本酒をつくろうと思ったのがきっかけで、一番の特徴は炭酸の醸し出すさわやかな味わい、という。

 学生たちは、東鶴酒造で利き酒をして、これまで飲んだことのなかったスパークリングのおいしさを知った。野中社長は「こんな味わいにしたいという話は聞いているので、学生さんが計画した理想の味わいになるよう最善をつくしたい」。

 悠々知酔づくりは7日に始まる。それを前に12月23日、学生たちは東鶴酒造で、洗米などの作業を見学した。この日は洗った米を袋詰めして浸水させて冷蔵庫に保管するまでを4人の学生が学んだ。米を洗ったり浸水させたりする各工程は、正確に時間を計りながら作業する。

 農学部4年の横尾真希さん(22)は「時間に正確でないと品質が変わってしまう。注意しなければと思いました。従業員の方々はとても丁寧な作業をされていた。私たちも、飲んでいただいた方に丁寧に作ったと思ってもらえるお酒がつくれたら」と語る。

 悠々知酔は19回目の製造になる。指導教官の小林元太教授は「授業では講義しているが、現場に行かないと分からないことも多い。我々が扱っている微生物がどう役だってどんな酒質につながるかを知ってもらいたい」と学生の現場での学びに期待しているという。

 今回はスパークリングと山廃の合計で米約1600キロを仕込み、製造量は4合瓶換算で3千~4千本程度を想定している。3月中旬ごろに販売開始の予定だ。

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