千葉県

 閉園が検討される中、暫定的な存続で今後の措置が検討されてきた千葉県佐倉市立佐倉幼稚園について、市議会で25日、来年4月に廃止する条例改正案が採決される。閉園の是非をめぐる議論に結論が出る形だ。

 市内には昨年度まで市立幼稚園が3園あり、市は2022年度は3園の運営費として約8800万円を支出した。だが19年の幼児教育・保育の無償化などで園児が減少。大幅に定員を下回る状況が続いていた。今年度の入園希望者も少なかったため、市は昨年、3園を今年3月末に廃止する条例改正案を市議会に提出した。

 一方、保護者らは昨年、「議論が不十分で、障害を持つ園児らの受け皿がなくなる」などとして、園の存続を求めて市側に署名を提出。市議会は昨年9月、3園のうち和田と弥富の2園のみを廃止とする修正案を賛成多数で可決した。佐倉幼稚園は暫定的に存続させて、1年をめどに運営状況や今後の措置を検討するとしていた。

 市によると、この1年で佐倉幼稚園には7人が入園。在園児計8人に対し、園長と教頭、教諭3人、用務員1人が対応している。運営費は6千万円程度で、近隣保育園の協力を得ながら同年代との交流を図っている。

 閉園の是非をめぐり市は、「議論と説明が不十分」とする保護者らの声を踏まえ、「佐倉市立幼稚園のあり方検討会議」を6回開催。市民1千人にアンケートを実施したほか、幼児教育が専門の大学教授や私立幼稚園協会、障害者支援団体に意見を聞いた。

 その結果、市民の7割超が閉園に理解を示している▽集団生活を学ぶには1クラスに園児20人以上が理想で、少人数では教育が難しい▽支援が必要な子を受け入れる民間幼稚園が複数あるなどの事実や意見を確認したという。

 そこで市は、佐倉幼稚園の入園児募集停止後も、来年3月末時点の在園児が卒園するまでは同園を存続することを盛り込んだ条例改正案を市議会に提出した。保護者らは納得せず、今年も閉園反対の署名を市側に提出した。

 市教育委員会学務課によるとこれまで、入園希望者を増やすために送迎バスの導入や、認定こども園化なども検討したという。だが、送迎バスの導入は保護者に経済的な負担が発生するほか、周辺の保育園やこども園は現在定員割れで待機児童もいないことから、選択肢からは外れたという。

 公立幼稚園の存在意義について、東京大学の村上祐介教授(教育行政学)は「行政内部に幼児教育の専門人材を確保でき、保育行政の質を上げやすい。子育て世帯の転入を狙う都市間競争にも有利に働く」と指摘。そのうえで「待機児童問題が改善してきた今、行政は幼児教育の量よりも質に目を向けて欲しい」と話す。(織井優佳)

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