深津春平さんの個展「豚を食べる」=2024年10月15日午後4時39分、東京都新宿区、芹沢みなほ撮影

 千葉県佐倉市出身の写真家、深津春平さん(28)の個展「豚を食べる」が、東京都新宿区のギャラリー、ニコンサロンで開かれている。高校生の頃、豚肉を扱う飲食店で働いた時に抱いた疑問に、写真家としてレンズを向けた初の個展だ。

 「この肉が自分の手元に来るまで、どれくらいの数の人が関わり、どんな仕事がされてきたのか」。高校生のアルバイトだった深津さんは、食べ残しなどを入れたゴミ袋を運びながら、良心の呵責(かしゃく)とともに、そんな疑問を抱き、大学で写真を学んでいた2018年から撮影を始めた。

撮影に難しさも

 養豚場や食肉処理場では防疫対策のため、部外者が豚舎に入ることは原則許されず、撮影は難航。粘り強く依頼し、十分な防疫対策をした上で、千葉市や木更津市の養豚場、精肉場、茨城県の飼料工場など県内外複数の施設で取材・撮影を重ねた。

 近年流行しているCSF(豚熱)や飼料高騰による利益減少に苦しむ養豚場の苦しみを目の当たりにした。一方、豚の部位ごとではなく、一頭丸々の取引とすることで、フードロスを減らし、安定供給につなげる「一頭買い」という取引手法を採り入れるなどの工夫を重ねる姿も知った。

 「命をつなげ、届ける」行為を持続しなければならない切迫感、緊張感の漂う現場で、取材・撮影をする中で「命をいただくことへの感謝」をより現実的に考えるようになった、という。

「消費行動考えて」

 個展では、豚の飼料工場から飲食店まで、豚肉流通の始終を記録した写真約40点を展示。深津さんは「普段当たり前のように口にしている豚肉の供給の現状を知って、消費行動を考えるきっかけにしてほしい」と話す。今後も「私たちの生活を支えている根源は何か」を再確認していく作品を制作していきたいという。

 28日まで(日曜休館)。午前10時半~午後6時半(最終日は午後3時まで)。入場無料。詳細はニコンサロンHP(https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2024/20241015_ns.html)へ。(芹沢みなほ)

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