戦後の前衛陶芸といえば、まず名前が挙がるのが京都の集団「走泥(そうでい)社」。なかでも八木一夫の「ザムザ氏の散歩」(1954年)は象徴的な作品として知られる。東京の菊池寛実(かんじつ)記念智(とも)美術館で開催中の「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」展は、走泥社や「ザムザ氏」の評価の背景に触れられる機会といえる。
走泥社は48年、京都の製陶業にかかわる八木、山田光、鈴木治、叶哲夫、松井美介で結成され、以後、同人を入れ替えながら半世紀にわたり活動した。その中でも、ひときわ知られているのが「ザムザ氏」だ。
直径約30センチの輪から細いパイプがいくつも飛び出した姿はシュールレアリスム系の彫刻や現代美術を思わせる。陶芸の伝統を離れ、ときに機能性も希薄なオブジェ陶の記念碑的作例だ。
過去の走泥社関連展では八木や山田、鈴木ら著名作家を紹介する企画が多かったという。これに対し、京都国立近代美術館を皮切りに巡回してきた今展は、団体の総体を再考し、同時代の他の前衛陶芸の動きも紹介することで、「走泥社が時代の中で生まれた姿を相対的に見せたい」(智美術館の島崎慶子・主任学芸員)という狙いがある。
実際、走泥社の前身の青年作…