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相撲甚句を披露する天津小の児童たち=2024年11月30日午後2時20分、大分県宇佐市下敷田、貞松慎二郎撮影
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 大相撲記録の69連勝で知られる昭和の大横綱・双葉山(1912~68)の母校、大分県宇佐市立天津(あまつ)小学校は、相撲甚句を伝承している全国的にも珍しい小学校だ。体育館で11月30日に「開校150年を祝う会」があり、5、6年生18人が法被姿で誇らしげに披露した。

 拍子木が打ち鳴らされ、「横綱双葉山を甚句で読めばヨ~」「ハァドスコイ、ドスコイ」と始まる相撲甚句。「親孝行の力持ち」「待った言わずに勝ち相撲」といった逸話を交えて生涯をたたえる内容で、「百連勝までヨーホホホィ、アー続くのかヨ~」など抑揚をつけて朗々とうたった。

 児童会長の島田花渉(はなほ)さん(6年)は「思っていたように披露できた。今の5年生がちゃんと4年生に引き継いでくれたらうれしい」と話した。

 天津小の卒業生で、現在は双葉山を顕彰する観光交流施設「双葉の里」の館長を務める横川博敏さん(74)は、この相撲甚句「横綱双葉山を偲(しの)んで」にひとしおの思いがある。地元の双葉山顕彰会会長を務めた新貝武夫さん(故人)が作詞、横川さんの父で宇佐相撲甚句会会長だった繁夫さん(同)が節を付け、1999年の「双葉の里」完成に合わせて作られた。天津小では繁夫さんの指導を受け、2007年度からうたい継がれてきた。

 製薬会社に勤めていた横川さんは、歌好きだった父・繁夫さんが相撲甚句をカセットテープに収録して広めるため、自宅で熱心に練習していた姿を覚えている。繁夫さんは10年8月に91歳で死去。その直後にあった天津小の運動会では、繁夫さんがうたう声を録音した相撲甚句が流れ、児童が相撲体操を披露した。会社を定年退職し、宇佐に戻っていた横川さんは「おやじの声を聞いて涙が出た。自分も練習して覚えようと思った」。

 ピーク時は700人に達した天津小の児童数はいま68人。横川さんは「双葉山と相撲甚句は学校の誇り。いつまでもうたい継いでほしい」と話した。

 祝う会に出席した是永修治市長は来年8月、大阪・関西万博の会場で相撲ゆかりの自治体が集まる行事が予定され、児童たちに相撲甚句を披露してもらう計画があることを明らかにした。

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