児童虐待の経験者5人の声を本にした山本昌子さん。児童養護施設の「卒業生」の成人を祝う活動をしている=東京都中央区

 鮮やかなピンク色の髪がトレードマークの「まこちゃん」。今年8月、東京都杉並区のボランティア団体代表・山本昌子さん(31)は、児童虐待を受けた経験がある5人へのインタビューをまとめた「親が悪いだけ、じゃない」を出版した。カバーの色は、髪と同じ鮮やかなピンクだ。両親の育児放棄で児童養護施設で育った。いま〝後輩〟たちの居場所として自宅を開放する活動をしている。山本さんが居場所に託す思いとは――。

晴れ着でお祝い「生まれてくれてありがとう」

 2016年、児童養護施設の出身者が成人になったことを晴れ着で祝う「ACHA(アチャ)プロジェクト」を始めた。「生まれてきてくれてありがとう」という思いを届けるためだ。同名のボランティア団体もつくり、代表を務める。

 きっかけは、高校卒業後に保育士資格を取るため専門学校に通っていたときの経験だ。21歳になっていたが、成人のお祝いで学校の先輩が振り袖を着せてくれた。「生まれてきてよかったと思ってほしい」と先輩は理由を話した。プロジェクトの名前はその先輩のニックネームにちなんで付けた。

まこハウスに集まった仲間と乾杯する山本昌子さん(左端)=本人提供

 20年夏からは空き家を再生した自宅を、後輩たちの居場所「まこHOUSE(ハウス)」として開放し始めた。「相談なんかしなくていい。会いたくなったら、話したくなったらおいで」。そんな場所だ。泊まってもいい。SNSで「行きたい」と連絡すれば、グループLINEでつながれる。

 お盆や年末年始などにはイベントを企画する。職場や学校が一斉に休みになると、友だちは家族の待つ家へ帰ってしまう。社会に出て直面する、一番寂しい時期に集まろうと始めた。

 交通費をため、遠くから来て泊まっていく若者もいる。まこハウスは宿泊費も食費も無料だ。「おなかいっぱいになって、お風呂で温まって、ゆっくり眠ってほしいから」

 ハウス運営などの活動には、支えてくれるマンスリーサポーターが欠かせない。月500円からの支援を、クラウドファンディングで募っている。

クラウドファンディングは「ACHAプロジェクト」のホームページから:

https://achaproject.wixsite.com/website-1

「来てよかったです」。紙皿に書かれたメッセージ=山本さん提供

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