元日の能登半島地震で石川県輪島市の自宅が壊れ、県外も含め転々と避難生活を続けてきた瀬戸千恵蔵さん(73)はこの夏、ようやく仮設住宅に入居できた。
同市宅田町にあるその仮設住宅は、入居して3カ月もたたないうちに、豪雨による床上浸水で家財が泥水につかった。
断水のため、思うように泥水を洗い流すこともできない。「せめて泥を流せれば、気分的にも落ち着く」
23日昼ごろ、妻と身を寄せる知人宅から車で仮設住宅に戻った。車の後ろには、水の詰まった非常用給水袋が積まれていた。
「座っていても気持ちがめいってしまう。動いていた方がいい」。持ってきた水とほうきで泥を洗い流す作業を始めた。
この仮設住宅を修繕するのか、また別の場所を用意してくれるのか、「市がどう判断するか。自分じゃどうしようもない」。いずれにしても、住まいの確保には時間がかかる。「その間、またどのような生活になるのか」と不安を隠せない。
行政の窓口も訪れてみるが、「希望が見えてくるならいいが、行くたびに寂しくなる」。最後は自分たちでやっていくしかない、という気持ちも強くなっている。
「何とか前を向いていこうと思っていたが、一歩後退する。また(復興が)遠のいていくのかなと思うと寂しい」(稲垣大志郎)