現在販売されている「やきそば弁当」のパッケージ=東洋水産提供

 道産子に長らく親しまれてきた即席カップ麺の「やきそば弁当」が今年で発売から半世紀を迎える。老若男女の小腹を満たしてきた北のソウルフードには、どんな歴史があるのか。東京都港区にある東洋水産本社を訪ねた。

 「今でこそ『北海道限定』と銘打っていますが、最初は本州で先行販売していたんです」。吉田憲司・即席企画課長が意外な話を切り出した。発売は1975年8月で、道内での販売開始は翌76年2月。その後、本州での販売が終わり、文字通りの「北海道限定」となったという。業界最大手・日清食品の主力商品「UFO」よりも長い歴史を持つ。

 やき弁の具材はキャベツと鶏肉のミンチ。「道民が好きな、野菜と果実のうまみを加えた少し甘めのソース」(同社)に細めの麺がよくからむ。味付けは発売当初からほとんど変えていないという。

 忘れてならないのが、麺の戻し湯で作る付属の粉末中華スープだ。当初は道内発売キャンペーン限定だったが、あまりに好評だったため継続した。

 「沸騰したお湯で麺を戻し、3分後にスープを作れば飲み頃の温度になる。麺の油のこく、野菜や肉のうまみが出て、寒い北海道で受け入れられた」と吉田課長は言う。

 同社と北海道との歴史は長い。63年、釧路に魚のすり身工場を建設し、さらに翌年には業界の先陣を切って即席麺工場を札幌に作った。水産加工品の流通網を武器に、即席麺の販路を拡大していった。道内では今も昔も不動のトップブランドだ。

 東洋水産によると、やき弁は道内のカップ焼きそば市場の約6割、「ごつ盛り」など同社製品と合わせると約8割のシェアを誇る。UFOや、関東で根強い人気の「ペヤングソース焼きそば」を大きく引き離す。

 今では2種類の大盛りバージョンの他、「ねぎ塩味」「ちょい辛」「やきうどん弁当」「たらこ味バター風味」などやき弁シリーズも多様化。全国のスーパーなどで開かれる「北海道フェア」では引っ張りだこだ。

 現在、やき弁は北海道工場(小樽市)で一括製造されている。「道民の皆さんは地元で作られたものに対する思いが強い。愛されている味を守り続けます」。8年間の北海道勤務歴がある吉田課長は、思い入れたっぷりに力を込めた。

 やき弁は同社や大手のネットショッピングサイトでも購入できる。

食感チェンジ! 記者の裏技

 発売当初から「やき弁」を食べ続け、たどり着いた一工夫がある。麺をまんべんなく箸で持ち上げ、ソースをなじませた後、電子レンジへ。500ワットで30秒。再び15回ほど麺を持ち上げる。余分な水分が飛んだ麺が残ったソースを吸い、モチモチの食感になる。

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