社員への仕事の目標設定は、難易度が中程度だと仕事へのエンゲージメント(前向きな心理状態)を向上させるが、難易度が高すぎると低下させてしまうと、横浜市立大と神奈川大の研究チームが上場企業の社員へのアンケート結果を分析し、欧州の専門誌に発表した。ただ、勤続年数が長いベテラン従業員では、目標の難易度による影響は見られなかった。

 研究チームの黒木淳(まこと)・横浜市立大教授(管理会計)は「仕事への意欲を高めてもらうには、目標だけでなく人材育成・教育が重要。ただ、若手とベテランで違ったアプローチが必要だ」と指摘する。

 国際的にも事業展開をする国内製造業の上場企業の従業員約3千人を対象にアンケートを実施。1404人(男性97%、管理職20%)から回答を得た。

 目標の難易度はスキルの幅広さなど3項目について1~5点で、仕事へのエンゲージメントは「誇りを感じる」「活力がみなぎる」など9項目を0~6点で点数化。さらに、困難や逆境から立ち直る力(回復力)や、目標達成のための意欲と代替手段を考え出す力(希望)など4要素で構成され、仕事への意欲の源泉となる「心理的資本」について、12項目を0~5点で評価してもらった。

 その上で、仕事へのエンゲージメントと、目標の難易度や心理的資本、勤続年数、学歴、性別、職位、業績の変動性などとの関連性を数式化し、統計分析した。

 その結果、目標の難易度が中…

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