増えるビジネスケアラー①

働きながら介護する「ビジネスケアラー」が増えるなか、仕事と介護の両立の重要性が高まっています。現状と対応策を報告します。(全3回)

 「あれ、父の足取りが違う」。都内に住む山中藤子さん(55)は2020年11月、80代の父親の異変に気づいた。コロナ禍で帰省が難しく、約1年ぶりに大阪にある実家に帰省したときだった。

 すでに父親には認知症の傾向があり、夜の不眠や、幻覚や妄想が生じる「せん妄」の症状も出ていた。同居する母親は持病で一時入院するなど体調はよくなかった。父親の変化にストレスも感じている様子だった。

 「このままだとまずい。きょうだいの誰かが、近くにいた方がいい」。すぐに北海道・旭川に住む兄と、都内で勤務する弟と話し合った。その結果、テレワークが可能だった山中さんが実家に行くことになった。

 山中さんは当時、広告大手の電通で、取引先の戦略プランニングなどをするマネージャーを務めていた。上司に状況を説明し、1カ月に10日ほど、実家で過ごしながらのテレワークに切り替えた。

介護で仕事に集中できない日々

 テレワークでは、数人の部下の業務の進捗(しんちょく)状況を管理し、連続的に続く会議をオンラインでこなした。

 並行して、一緒に過ごす父親…

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