小泉今日子さん=東京都渋谷区、横関一浩撮影

 小泉今日子は言う。人生はいろいろある。でも、どう生きるかは選び直せる、と。同学年の小林聡美とダブル主演をつとめるドラマ「団地のふたり」(NHKBS、日曜午後10時)は、何者でもない50代の独身女性2人が主人公だ。様々な経験をして実家に戻った2人は、ほんのり苦みをたたえながら、なんだかんだで楽しそうに生きている。

 大学非常勤講師の「ノエチ」こと野枝(小泉)とイラストレーターの「なっちゃん」こと奈津子(小林)は、団地で育った幼なじみ。それぞれ仕事が順調な時期もあり、結婚や同棲(どうせい)をし、一度は団地を離れていたが、いまは実家に戻ってほぼ毎日顔を合わせている。ご飯を食べながら愚痴(ぐち)ったり、実家に眠るレトログッズをフリマアプリで売ったりしながら、年長者の困り事を手伝い、若者の相談に乗る。将来への不安も忘れたい過去もあれど、結構充実しているように見える。小泉はこの団地に、「少しだけの幸せの循環」があるという。「2人は団地の中では中堅。自分たちが世の中の役に立つことが少ないなと思っているなかで、誰かのお手伝いができたり、先輩たちと若い人のかけはしになれたりすることが、お互いの幸せになる」

 自身と同世代の女性がどう生きてきたか、いまどう生きているか、という物語でもある。「私たち1960年代生まれは、ずっと変わりゆく日本や東京を見てきて、そこに自分の時間が並行して生きてきた感じがすごくするんです」。例えば、雑誌。若い女性向けが中心だったファッション誌は、女性のキャリアやライフステージの変化にあわせ、80年代から90年代にかけて次々と創刊されていった。

ドラマや映画から抜け落ちてきた生き方

 生き方の多様化をメディアも…

共有
Exit mobile version