中国河南省で2024年9月、合同結婚式の会場で手を取り合う新郎新婦=新華社。結婚の機運を高めようと政府主導で開かれたイベントだったが、SNSなどでは若者らの冷めた反応も少なくなかった

 「鉄鎖(てっさ)の女性」の存在が中国社会を震撼(しんかん)させてから3年が過ぎた。これまでの中国取材のなかでも、ひときわ印象深い事件だった。

 北京冬季五輪の開催を翌月に控えた2022年1月、中国東部の江蘇省徐州市豊県で撮影された女性の動画が拡散した。真冬にみすぼらしい小屋で、首を鎖につながれて閉じ込められていた。女性は人身売買の被害者で、「夫」との間に8人の子どもがいた。1999年に長男を出産。2011~20年に7人の子どもを産み、この間に精神障害が悪化したという。「夫」には23年4月、虐待と監禁の罪で懲役9年の一審判決が下されている。

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 著しい経済発展を遂げた中国で、こんなことが起きうるのかという衝撃が広がった。女性が誘拐と売買の対象とされることへの怒りとともに、次のような反応も相次いだ。

 「一歩まちがえれば、鎖につながれていたのは自分だったかもしれない」「(北京冬季五輪で国民的スターとなった)谷愛凌選手のような優秀な人間にはなれないけれど、私、娘、孫娘と鉄鎖の女性の差はほんのわずかだ」

 鎖という強烈な表象が「女性…

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