写真・図版
岡山県の奈義町現代美術館の展示室「太陽」にある、荒川修作+マドリン・ギンズの作品「遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体」(© 1994 Reversible Destiny Foundation. Reproduced with permission of the Reversible Destiny Foundation)

 地域にとってアートとは? 岡山県の山あいにある開館30年の奈義町現代美術館(ナギ・モカ)には昨秋、町の人口約5500人の何倍もの人が訪れた。学芸員として開設準備から携わってきた岸本和明館長に、人を動かすアートの力と社会との関係を聞いた。

 「作品と建物が一体になった美術館を」という建築家・磯崎新さんの考えをもとに、ナギ・モカは生まれました。現代美術のトップランナーたちに依頼した作品のために建てた、三つの専用展示棟があります。

 開館年度の入館者は約4万人でしたが、だんだん減って一時は約1万人に。「農機具小屋に転用したら」という厳しい声もあった。それでも、磯崎さんの「10年、20年後には理解される」という言葉を支えに、地域の人たちに優れた常設作品に触れてもらう努力を続けました。館内ギャラリーでの県内作家の企画展、イベントやワークショップ、入り口を共有する町立図書館との連携なども積み重ね、徐々に入館者は回復しました。

 雑誌などで「奈義でしか見ら…

共有