宿泊税の見直し案を示す松井孝治市長=2025年1月14日午後2時17分、京都市中京区、武井風花撮影

 京都市の松井孝治市長は14日の定例記者会見で、市が200~1千円を徴収している宿泊税について、最大1万円に引き上げる方針を明らかにした。条例改正案を2月市議会に提出し、2026年3月以降の実施を目指す。今後は税の使い道が焦点となる。

 京都市は現在、1人1泊2万円未満は200円、2万円以上5万円未満は500円、5万円以上は1千円の宿泊税を徴収している。改正案では5段階に細分化し、6千円未満は200円、6千円以上2万円未満は400円、2万円以上5万円未満は1千円、5万円以上10万円未満は4千円、10万円以上は1万円とする。

 高価格帯の宿泊施設の開業が相次ぐなか、宿泊客の担税力に見合った税を課すべきだとの考え方から、区分は増やして上限を大幅に引き上げたという。

 市によると、区分ごとの宿泊数は2024年度の見込み数で、1泊6千円未満は14%、6千円以上2万円未満は80%、2万円以上5万円未満は5%、5万円以上10万円未満は1%、10万円以上は0・5%。これをもとにした税収の試算は、宿泊数最多の6千円以上2万円未満は65%、10万円以上は10%。宿泊税の税収は約126億円と、23年度の約52億円に比べて倍以上に増える見込みだ。

 引き上げの狙いは、観光客の増加で市民生活に影響が出ていることへの対策費用を宿泊客にも負担してもらうことだ。市は宿泊税の使い道として、観光地のごみ対策や市バスの市民優先価格の実現などを想定している。橋の整備などにも用途を広げる方針だ。

 宿泊施設には不安の声が根強い。市内の各宿泊業界団体は有識者会議に対し「旅行先としての『京都離れ』につながる恐れがある」「日帰り観光客も含めた観光税の検討があるべきところ、安易に宿泊者から徴収する宿泊税の増税が検討されているように見受けられる」などとする意見書を提出していた。

 左京区で1人1泊3千円~4千円程度のゲストハウスを営むルバキュエール裕紀さん(47)は「低価格の宿の宿泊税は据え置きでほっとしている」としつつ、「お客様によって宿泊税が変わることが想定され、徴収に手間がかかるかもしれない」と話した。

 高級老舗旅館「要庵西富家」(京都市中京区)の西田和雄社長(69)は「負担は増えるが、スイートルームに泊まるお客さんは気にしないのでは」と話す。ただ、現状では宿泊税を何に使っているのか分からないとして、「徴収するなら、わかりやすく示してもらいたい」と要望した。

 市は宿泊業者に対し、宿泊税のキャッシュレス支払いへの対応などを支援するための特別徴収事務補助金の補助率を3%に引き上げるなどの支援を実施するという。松井市長は「宿泊客や関係者の皆様にはご負担をお願いするが、京都の魅力を向上させるには観光客のみなさまにも寄与する。ご理解をいただきたい」と話した。

 オーバーツーリズム対策に詳しい九州大アジア・オセアニア研究教育機構の田中俊徳准教授(環境政策論)は、「オーバーツーリズムに対して喫緊の対策が求められるが、一般財源に限りがある以上、対策費用を宿泊税に求めることは大いに理解できる」と評価する。税収は観光地のPRのような観光振興ではなく、「文化財や良好な街並みの保全、自然環境の保護、渋滞などによって迷惑を被っている住民への還元などに用いられるべきだ」としている。

 京都橘大の阪本崇副学長(文化経済学・財政学)は「宿泊税は市民からしたら懐が痛まない税で引き上げの意義はある。ただ、観光客数が激減するようなことはないのでは」と話す。その上で、オーバーツーリズムによって市民は路線バスに乗れないといった課題に直面していると指摘。税収は「公共交通政策など観光客も市民も快適になるサービスにもっと使うべきだ」と語っている。

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