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沈没した「KAZUⅠ(カズワン)」=知床遊覧船のウェブサイトから

 北海道・知床半島沖で2022年4月、26人が乗った観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、釧路地検は9日、運航会社「知床遊覧船」社長の桂田精一容疑者(61)を業務上過失致死罪で起訴し、発表した。認否は明らかにしていない。

 起訴内容は、桂田容疑者は事故当時、同社の事業主・安全統括管理者・運航管理者という三つの立場にあり、気象や海の条件に応じて船長に出航や航行継続の中止を指示して危険を防ぐ注意義務があったにもかかわらず、これを怠り、船を沈没させて26人を死亡させたというもの。

 第1管区海上保安本部は業務上過失致死と業務上過失往来危険の疑いで桂田容疑者を逮捕していた。釧路地検によると、証拠の内容などに鑑み、業務上過失往来危険罪での起訴は見送ったという。罰則は業務上過失致死罪の方が重い。

 また、業務上過失致死容疑などで書類送検された豊田徳幸船長(当時54)については同日、容疑者死亡で不起訴処分とした。

 桂田容疑者は弁護人を通じてコメントを出し、「これからも謝罪と償いを続けていく所存です。刑事裁判の場では、私個人の認識や記憶していることをきちんと申し述べたい」とした。

 事故で犠牲となった千葉県の橳島(ぬでしま)優さん(当時34)の両親も弁護士を通じてコメント。「彼が犯した罪の重さを考えれば当然の結果であると考えている。桂田氏には潔く自身の責任を認めてほしい。裁判所には厳正な処罰を求めたい」とした。

 今後、釧路地裁で裁判が開かれる見通し。裁判員裁判にはならない。

 知床観光船事件被害者弁護団(代表・山田廣弁護士)によると、刑事裁判では家族の多くが「被害者参加制度」を利用することが見込まれるという。「引き続きご家族の皆様に寄り添いながら、なぜこのような事件が起きたのかを公判の中で明らかにするとともに、刑事裁判という場を通じて、改めてご家族の皆様の想いを社会に訴えかけていきたい」としている。(新谷千布美、鈴木優香)

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