色鮮やかで、額縁から飛び出さんばかりの立体的なアートたち。絵の具で塗ったり、色紙を使ったりしているように見えるが、実は使われているのは新聞の紙だけだ。
神戸市中央区で夫とともに串カツ店「串かつ大原」を営む八木美幸さん(70)=灘区在住=は、そんな作品を手がける「古新聞アーティスト」の顔も持つ。
広告面や記事につく写真など、色のついた紙を使って自然や動物を題材にした作品を29年にわたって制作している。
趣味で登る山で見た風景。休日に釣った魚。そんな題材からインスピレーションが生まれるという。
デザインが決まると、新聞の紙面を短冊状に切る。さらに1センチほどの幅の棒状に折り、それを丸めてパーツを作る。
作品の大きさによって何十、何百個のパーツを組み合わせて完成させる。
例えば、「かさご」という作品。ギョロッとした目と、コントラストがはっきりした赤白のうろこが目を引く。
「映える魚がいないかな」と思い立ち、見つけたのが、魚図鑑に載っていた大きいヒレが特徴のカサゴだった。
子どものころから美術の授業が好きだった八木さん。学校の休み時間に黙々と画用紙に向かって絵を描いた。
高校卒業後は筆を握ることはなかったが、40代で転機が訪れた。阪神・淡路大震災だ。
灘区の自宅は半壊。「串かつ…